水素関連機器共同研究・開発部門 Research and Development
しかし、自然再生可能エネルギーから製造される水素だけでは、需要に対し絶対量が圧倒的に不足している現状があります。
また、天然ガス等から従来の水蒸気改質法で水素を製造しようとすると、CO2が発生してしまいます。
そこで、天然ガス等からCO2を発生させないで水素を製造できる“ターコイズ水素製造法”が注目されています。
弊社においては、知の拠点あいち重点プロジェクト(II期)「メタン直接分解水素製造システムの開発(2016~2018年度)」、NEDO水素利用等先導研究開発事業「メタン直接分解による水素製造に関する技術調査(2020~2021年度)」続けて、NEDO水素利用等先導研究開発事業「メタン直接分解による水素製造技術開発(2021~2022年度)」において、ターコイズ水素製造に関する研究・開発を行ってきました。
現在、これらの成果を社会実装すべく、パートナー企業を募集しています。
本技術を使用すれば、従来通り天然ガスをを使用しながらカーボンニュートラルを実現することも可能となります。
メタン直接分解によるターコイズ水素製造 Turquoise hydrogen production by direct methane decomposition
メタンから水素を製造する従来の水蒸気改質法では、CO2の発生が避けられません。
そのために発生したCO2を分離し集め、地中深くに貯蔵・圧入するCCS装置が必要となりますが、日本ではCCSに適した地層を見つける困難さもあります。
メタン直接分解法は、炭素を固体の状態で回収するので、CCS装置が不要となります。また、COが発生しないことからPSAの小型化が可能となるなどの特徴があります。
また、ヒートバランス等においても、原料ガス等の予熱等や高圧化が不要なだけ有利と思われます。
一方、直接分解法では、メタン原料中のCをCO2ではなく固体の炭素として回収するので、水蒸気改質法に比べメタン原料が2倍必要であるという欠点もあります。しかし、得られる固体の炭素の純度が高いので、有価物として売却することにより原料コストを補填することができます。
従来のターコイズ水素製造法は、次のようなものがあり、それぞれ課題があります。
KIT(独)や C-ZERO(米)のように、副生炭素の分離処理が容易な溶融金属を利用する方式は高温の反応炉を使用し熱容量の大きい溶融金属を加熱するため、エネルギー効率が悪く装置も大きい。
Monolith (米)では、電力を用いてプラズマ熱分解を行うが電力使用の点で日本では不向きである。
HAZER(豪)や戸田工業(日)のように、副生炭素による触媒の失活防止のため触媒とメタンを流動槽やロータリーキルン等の反応炉を用いて攪拌し、連続熱分解する方法は装置が複雑で大きい。また、触媒の再生処理が必要となる。
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■ 高性能金属板触媒の開発により、触媒が長寿命で純度の高い炭素が得られる。
金属板自体が構造体触媒であり、シンタリングや生成炭素による触媒活性点への堆積が少なく、生成炭素と触媒の分離作業が不要で、高純度の炭素が得られる。
- ■ 生成炭素の排出機構を含め、反応炉の構造が簡単であり小型化できる。
- ■ 生成される水素ガス中にCOが含まれないので、PSA装置が小型化できる。
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■ 反応炉温度が700℃と低温で、エネルギー効率が良い。
原料ガスではなく、構造体触媒を直接加熱する方法により、反応炉を低温化。原料ガスを予熱する必要もなく、エネルギー効率が他社に比べ高い。
CO2からCOを製造する技術「SDRM」 “SDRM” technology to produce CO from CO2
- CH4 + CO2 → 2CO + 2H2 ・・・(1)メタンドライリフォーミング反応
- CH4 → C + 2H2・・・・(2)メタン直接分解
- C + CO2 → 2CO・・・・(3)Boudouard 反応
水が析出しない。
H2/CO比を自由に変更できる。
温室効果ガスの原因となるメタンと二酸化炭素を原料にして、C1化学の基礎であるCOとH2を別々に製造できる。COとH2の混合比を自由に変更できる。
反応炉が小型のため、毒性の高いCOを使用現場で製造できる。
CO2からCOを製造するのにH2を必要としない。


温室効果ガスの原因となるメタンと二酸化炭素を原料にして、C1化学の基礎である COとH2を別々に製造できる。CO2と水の副生がない。
水素不要の「セミクローズドCNシステム」 "Semi-closed CN system" that does not require hydrogen
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルの実現が求められています。
主要な温室効果ガスであるCO2の排出量を抜本的に削減する必要があり、従来の化石燃料に代わり燃焼時に、CO2を排出しない水素が注目されている。しかし・・・
日本は山国で再生可能エネルギーの適地も乏しく、水電解により得られるグリーン水素は非常に高い。
また、化石燃料から副生するCO2をCCS処理することで得られるブルー水素にしても、パイプラインでサプライチェーンが完結する欧米に比べ、価格が高い。
さらに、海外で生産した水素を日本に輸入するにしても、水素の液化温度は天然ガスの液化温度-162℃に比べ-253℃と低く高コスト要因になる。
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高額な水素の貯蔵・運搬設備の投資が必要となり、維持費も大幅に上がる生産設備を都市ガス用から水素用に変更する必要がある
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- 全てを欧米に有利な水素だけでCNを実現するのではなく、 日本が技術基盤を有するLNGを活用したCNと 水素を活用したCNとのハイブリッドを目指すべきである。
我々の目的は、カーボンニュートラル(CN)を実現することであり、水素やアンモニアを作ることではありません。
確かに、水素は移動体や小規模のCO2発生源には有効です。
しかし、大工場やコンビナート等から排出されるCO2が6割近く占めていることを考えると、全てを水素に置き換えるよりも、大規模発生源にはメタネーションを組合わせたCNシステムを採用し、小規模の発生源にはカーボンフリーの水素を採用した方がよいのでは・・・
小規模需要に対しては、水素や合成メタンや合成燃料を採用する。
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熱利用の工場やコンビナートでは、semi-closed CN systemにより、従来の天然ガスを使用していたインフラや加熱設備などをそのまま使用して、CNを達成できます。
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ターコイズスチールでは、天然ガスと酸化鉄(Fe2O3)からCO2を排出することなく、鉄(Fe)と一酸化炭(CO)と水(H2)を生成します。
ターコイズセメントでは、石灰石(CaCO3)からCO2を排出しないでセメントが製造できます。 -
バイオメタンからターコイズ水素と副生炭素を製造し、SDRMにてカーボンフリーメタノールを製造できます。
IHARAのメタン直接改質(DDM)法、逐次炭酸ガス改質(SDRM)プロセスにメタネーションプロセスに組み合わせたもので、外部から水素を供給することなくCO2を循環利用する、ゼロエミッション・メタンガス供給・利用システムです。既存の都市ガス供給・利用システムに追加設置が可能。副生する炭素の販売によりメタンコストをオフセットできます。


semi-closed CN systemでは、従来の熱利用システムに比べ2倍のメタンを投入しますが、副生する固体炭素でメタンコストを補います